TypeScriptの学習リソース
TypeScriptには本書や開発元のMicrosoftが提供しているものを含め、学習や調査に役立つ数多くのリソースが存在しています。
このページでは本書の解説を読んだ後や、読んでいる途中でも利用できるTypeScriptについての情報源を紹介します。さらにこのページの後半では学習や開発において非常に重要となる公式ドキュメントについて構造と読み方などを含めた攻略方法を解説します。
このページで紹介したリソースのすべてを完全に読みこなすというのは困難かつ非効率なので、それぞれの情報源について役割やレベルなどを意識して取捨選択して部分的に読み込んだり、目的に応じて使い分けることをオススメします。
リソースの紹介
Microsoft公式の情報源
Microsoftが公式で提供している主要な情報源を紹介します。
リソース | 特徴 |
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TypeScript Documentation | TypeScriptの公式ドキュメントです。最重要の情報源であり、学習や開発の際に必須のリファレンスとなります。このページの後半で内容の詳細と攻略方法を解説します。 |
Microsoft Developer Blogs | Microsoftの開発者ブログにおけるTypeScriptについての記事です。新しいバージョンの情報告知など、TypeScriptの最新情報を知ることができます。 |
FAQ | 開発リポジトリのwiki上にまとめられたTypeScriptについてのよくある質問集です。挙動やプラクティスなどについてWhy/What/How/Shouldのタイプの質問と回答が提供されています。 |
公式から提供される情報源の中でもっとも重要なものが公式ドキュメントですが、公式ドキュメントに記載されていない細かい挙動や概念などは開発リポジトリにあるいくつかの情報源を参照する必要があります。
リソース | 特徴 |
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Roadmap | TypeScriptに将来的に追加される機能のロードマップです。これまでリリースされてきた各バージョンで導入された機能のプルリクエストが一覧となっており、各プルリクエストでは言語開発者による概念や機能の詳細な説明が記載されています。 |
docs/spec-ARCHIVED.md | TypeScriptの古い仕様書であり、公式ドキュメントに未記載のいくつかの細かい挙動や概念などが記載されています。現在はmainブランチから削除されているため注意が必要です。 |
compiler/checker.ts | 型チェッカーの実装となるソースコードのファイルです。現在のTypeScriptには更新されている仕様書が存在せず、型チェックの挙動がコメントとして記載されている唯一のドキュメントとなります。 |
サードパーティの情報源
サードパーティの情報源として人気のある学習リソースをいくつか紹介します。
リソース | 特徴 |
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roadmap.sh | 開発者が学ぶべき内容についてロードマップ形式でまとめられているサイト「roadmap.sh」のTypeScriptバージョンです。このサイトではTypeScriptという言語の全体像や学習パスをロードマップの形で俯瞰することができます。 |
TypeScript Deep Dive 日本語版 | オンライン上で公開されているオープンソースの解説書です。コンパクトながらTypeScriptについての高度な内容を知ることができます。オリジナルバージョンは英語ですが、有志による日本語翻訳があるため日本語で読むことができます。 |
プログラミングTypeScript ―スケールするJavaScriptアプリケーション開発 | O'Reilly Japanから出版されているTypeScriptの入門書です。TypeScriptのシンタックス以前に型安全性や、型チェッカーとは何か、そもそも型とは何なのかなど根本的なことから解説されており、TypeScriptの型システムについて一から理解することができます。 |
プロを目指す人のためのTypeScript入門 安全なコードの書き方から高度な型の使い方まで | 技術評論社から出版されているTypeScriptの入門書です。通称「ブルーベリー本」と呼ばれ、TypeScriptのみならずJavaScriptについての解説も含まれています。 |
プレイリスト:日本一わかりやすいTypeScript入門 | Youtubeでとらゼミから提供されているTypeScriptの解説動画シリーズです。動画で分かりやすくTypeScriptの基本について学ぶことができます。 |
JavaScriptの学習リソース
TypeScriptの学習にはJavaScriptの学習が欠かせません。ここではJavaScriptの学習リソースとして有名なものをいくつか紹介しておきます。実際、TypeScriptの学習の過程ではJavaScript自体についてもっと詳しく知りたいという場面も多々出てきますので、必要になった時にはこれらのドキュメントを参照することをオススメします。
リソース | 特徴 |
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MDN Web Docs | JavaScriptのシンタックスや機能について記載されたWeb上のドキュメントで、Mozillaの運営でオープンソースの形で執筆されています。JavaScriptに限らずHTMLやCSS、WebAPIなどWebに関わる技術について網羅的にカバーしており、さまざまな場面でリファレンスとして機能します。 |
JavaScript Primer 迷わないための入門書 | ES2015以降の機能をベースにしてJavaScriptについて一から学ぶことができるWeb上のドキュメントです。読みやすいように書籍版としても出版されており、書籍で読みたい方はAmazonや達人出版会の方から入手することができます。 |
本書と同じく、両者共にコンテンツ自体がGitHubで管理されているため、プルリクエストやissueを作成して貢献することが可能な点が特徴的です。
公式ドキュメントの攻略
TypeScriptの公式ドキュメントは英語で書かれている上に分量が多いため、手出しすることを躊躇してしまうかもしれません。
とはいえ、TypeScriptの学習や開発を進める上で各機能についての正確な情報や詳細情報を知るためには公式ドキュメントを読むことが必須となるので、この項目では中核となるハンドブックを中心に公式ドキュメントの構造や読み方などを含めた攻略方法を紹介します。
公式ドキュメントは本書を読み終えた後でもお世話になることが頻繁にあるため、ぜひ読み方をマスターして公式ドキュメントと仲良くなりましょう。
構成要素
まずは公式ドキュメントの構成要素から把握していきましょう。TypeScriptの公式ドキュメントは次にリストアップした複数のセクションから構成されます。
セクション | 内容 |
---|---|
Get Started | 学習者のバックグラウンドやスキルに基づいたイントロダクションのセクションです。 |
Handbook | ハンドブックは言語機能と挙動の包括的ガイドです。日常的なユースケースにおけるTypeScriptの機能と挙動について数時間で読めるような構成となっています。 |
Reference | ハンドブックでカバーしていない応用的な話題のリファレンスとなるようなセクションです。ユーティリティ型や名前空間、型の互換性などの話題が含まれます。 |
Tutorial | いくつかの代表的な環境でTypeScriptの導入と利用を行うためのチュートリアルです。 |
Declaration Files | 型定義ファイル(.d.ts )についての解説を行うドキュメントです。パッケージの配布などで型定義ファイルを作成する際にはこのセクションが役立ちます。 |
JavaScript | JavaScriptを利用するプロジェクトでTypeScriptのツールなどの恩恵を受けるために必要な情報などが記載されています。 |
Project Configuration | プロジェクト設定についてのドキュメントです。tsconfigの設定方法などについて解説されています。コンパイラオプションについての詳細な情報を知りたい場合にはこのセクションが役立ちます。 |
Cheat Sheets | シンタックスなどが画像に分かりやすくまとめられているチートシート。TypeScriptのシンタックスを俯瞰したい際に有用です。 |
What's new | 各バージョンごとに追加された機能の紹介ページです。新しいバージョンのページでは実際にその機能が追加されたプルリクエストが紐付けられているため、より詳細な挙動の説明を知りたい場合にはそのリンクをたどることで開発者による説明を読むことができます。 |
公式ドキュメントと言うと通常はハンドブックのことを指す場合が多いですが、TypeScriptの公式サイト上の「TypeScript Documentation」というページが存在しており、チートシートなどを含めてこのページにまとめられているドキュメントの一群が公式ドキュメントとなります。
とはいっても、すべてのセクションを隅から隅まで一気に読んでいく必要はありません。初学者が重点的に読み込むべき箇所や効率的に読むための方法はいくつかあります。
基本的な攻略方針
公式ドキュメントの攻略方針は「学習のレベルや状況に応じて公式ドキュメントの読み方を変えていく」というのが有効です。この方法によって分量のある公式ドキュメントを効率的に読みこなすことができます。
具体的には次のような方法が順当かつオススメです。
- (A) 公式ドキュメントの構造や特徴を掴む
- (B) 「Get Started」のイントロダクションを読む
- (C) ハンドブックを頭から読む
- (D) 詳細な知識が必要になった段階でリファレンスなどを読む
- (E) TypeScriptの開発リポジトリにある一次情報を読む
- (X) チートシートでシンタックスの概要を俯瞰する
基本的には(A)から(E)までの方法を時系列順で行っていくことで知識を徐々に拡張してくことができます。
(A)についてはこのページを読み込むことで完了しますが、特に公式ドキュメントを学習リソースとして見なすときには「Get Started」とハンドブックが重要となり、初学者が重点的に読み込むべき箇所となります。この2つについては時間をとって重点的に読み込み、リファレンスなどは必要になった時や暇な時につまみ食いしていくように読んでいくと効率的に読みこなすことができます。
また、特定の機能は公式ドキュメントでは説明が不十分なものなどがあります。より詳細な挙動などについて知りたい場合などは、TypeScriptのコードベースとなっているリポジトリからその機能が実装されたプルリクエストの説明を読み込みことで細かい挙動を知ることができます。各機能が導入されたTypeScriptのバージョンは「What's new」のページや開発リポジトリの「Roadmap」から知ることができるのでそれらの資料からプルリクエストにアクセスして詳細な情報を得ることができます。
(X)のチートシートにはTypeScriptのシンタックスが網羅的に分かりやすくまとめられており、これを眺めることで必要となる知識を俯瞰することができるので気になった時に見てみるとよいでしょう。
公式ドキュメントの攻略方法の基本方針はこのようになりますが、以下では中核となるハンドブックについて解説していきます。
ハンドブックのバージョン
TypeScriptは2012年に初めてリリースされてから今や10年以上の歴史があります。その間も継続的なアップデートが繰り返されて機能的に進化してきた訳ですが、言語自体のアップデートに伴って公式ドキュメントも進化してきました。
📄️ TypeScript誕生の背景
TypeScriptは、JavaScriptでも大規模なアプリケーションを開発しやすくすることを目的に開発されたプログラミング言語です。
公式ドキュメントにはさまざまなセクションがありますが、中でも「ハンドブック」と呼ばれるセクションが非常に重要です。ハンドブックはTypeScript言語の包括的なガイドであり、日常的に使用するTypeScriptの機能と挙動について学習者が強固な理解を得られるようなウォークスルーを提供しています。
そして、公式ドキュメントの顕著な進化として、2021年に「v2」と呼ばれる新しいバージョンのハンドブックが公開されたことが挙げられます。v2以前のハンドブックは「v1」と呼ばれ、現在では非推奨(deprecated)なものとしてアーカイブされたリポジトリから閲覧することが可能です。
v2ハンドブックの公開はかなり最近のことなので、これまでのポピュラーな入門書籍やWeb上のリソースの多くはv1の内容が反映されたものとなっていることに注意してください。
ハンドブックの特徴
v2ハンドブックは開発者ブログの記事「Announcing the New TypeScript Handbook」において次のような制約のもとで執筆されていると語られています。
- JavaScriptの解説は専門家に任せる (Leave teaching JavaScript to the experts)
- インクリメンタルに教える (Teach incrementally)
- コンパイラに話させる (Let the compiler do the talking)
- 日常的なケースについて執筆する (Write for the everyday cases)
特徴的なのは、ハンドブックではJavaScriptの知識についての解説を一からすることなく、他の書籍やWeb上のリソースに任せることで内容をコンパクトにしている点です。ハンドブックの目的のひとつが、言語的にスーパセットとなるTypeScriptがJavaScriptの上にどのように構築されているかをエンジニアが理解できるようにすることであるため、読者に対してJavaScriptの程度の知識や背景があることを前提にして話が進んでいきます。
ただし、あとで語るようにさまざまなスキルレベルを持つ読者のためにハンドブックの外側に「Get Started」というイントロダクション用のセクションを用意しており、他の言語習得者を含めて初学者はこのセクションのページから読むことが推奨されています。
サバイバルTypeScriptと併用しよう
上で語ったようにハンドブックではJavaScriptに元々ある機能やシンタックスなどについての解説はありません。しかし、TypeScriptの理解にはJavaScriptの理解が欠かせないという事実から、TypeScriptと並行してJavaScript自体も学びたい場合には本書の内容が非常に有用です。
📄️ JavaScriptはTypeScriptの一部
TypeScriptの文法はJavaScriptの文法を拡張したものです。TypeScriptで拡張された文法は、主に型に関する部分です。それ以外のほとんどの文法はJavaScriptに由来するものです。そのため、素のJavaScriptもTypeScriptとして扱うことができます。たとえば、次のコードは100%JavaScriptのものですが、これをTypeScriptコンパイラーは解析でき、静的な検査が行なえます。
本書を読んで気になった機能や深堀りしたい内容があれば、ハンドブックを含めた公式ドキュメント全体で探してみましょう。英語が苦手であれば、本書のページを熟読して内容をしっかり理解した上で該当する公式ドキュメントのページを読んでみることをオススメします。本書では次のページを含めオリジナルの英単語を数多く表記しているのでそれらの単語を使って公式ドキュメント内を検索していくと目的の読みたい箇所が簡単に見つかります。
📄️ 索引:記号とキーワード
JavaScriptやTypeScriptのコードには?.のような記号やasのようなキーワードが使われます。こういった記号やキーワードはGoogleで検索しづらく、意味を調べるのは難しいものです。
また、本書との類似点としてハンドブックではすべてのエッジケースや特殊すぎる機能をカバーすることなく、日常的なケースを意識した内容となっています。そして、その範疇を超えるものはリファレンスセクションのページに記載されています。
逆に本書と公式ドキュメントの違いとして挙げられるのが、本書はより実務を意識した作りとなっている点です。さまざまなアプリケーションを実際に実装してみる第3章の「作って学ぶTypeScript」やコーディングテクニックを紹介する第5章の「Tips」、他にも各所で解説しているプラクティスなどが実務を行う上で役立つはずです。したがって、公式ドキュメントと本書の両方を目的や状況に応じて使い分けることで効率的に学習を進めることができます。
TypeScriptについては本書と公式ドキュメントを併用するのがよいですが、JavaScriptの機能やシンタックスについてより深く知りたいという場合にはMDN Web Docsを併用し、さらに仕様まで知りたいという場合にはECMAScriptの仕様書を参照するようにしてください。
- TypeScript → 公式ドキュメント
- JavaScript → MDN Web Docs
- ECMAScript → ecma262
TypeScriptという言語は「型システム+ランタイム+言語仕様」というように別々に存在する複数の言語や仕様、APIなどのレイヤーを内包しているため挙動や問題の調査などを行う場合にはそれぞれのレイヤーでのドキュメントに当たる必要があります。TypeScriptの公式ドキュメントを参照するタイミングは、TypeScriptの機能や設定、つまり型に関しての機能(型注釈や型推論、型演算子など)やコンパイラオプションなどについて知りたい場合となります。
何についての情報を知りたいのかを意識して、JavaScriptのシンタックスやECMAScript仕様を知りたい場合にはそれが書いてあるドキュメントを読むようにしましょう。
イントロダクションを読もう
ハンドブックに取り組みはじめる前に読むべき項目として「Get Started」というイントロダクションのセクションが存在します。このセクションのページでは、さまざまなスキルレベルやバックグラウンドを持つ多様な読者がTypeScriptの特徴を簡単に知れるように次の5つのドキュメントが用意されています。
ページ | 内容 |
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TypeScript for New Programmers | TypeScriptの最初の言語として選んだプログラミング初心者のためのイントロダクション。 |
TypeScript for JavaScript Programmers | JavaScriptの経験があるプログラマーのためのイントロダクション。 |
TypeScript for Java/C# Programmers | JavaやC#などのオブジェクト指向プログラミング(OOP)の経験があるプログラマーのためのイントロダクション。 |
TypeScript for Functional Programmers | HaskellやMLなどの関数型プログラミング(FP)の経験があるプログラマーのためのイントロダクション。 |
TypeScript Tooling in 5 minutes | TypeScriptのインストールからシンプルなWebアプリケーションの構築までの方法を簡単に解説したページ。今すぐにTypeScriptを使いたいという読者に適しています。 |
自身のスキルやバックグラウンドに応じたイントロダクションのページを選択して読むようにしてください。以下でそれぞれのスキルレベルの人が読むべきページの内容を紹介しますが、「Get
Started」の各ページにはそこにしか記載されていない重要な知識や考え方などがあるため、時間があれば他のページにも目を通しておくことをオススメします。
🧑💻 プログラミング初心者
TypeScriptがはじめてのプログラミング言語となる方は「TypeScript for New Programmers」のページから読むことで今後どのような学習をすればよいのかの指針を得ることができます。
内容としては、JavaScriptの歴史や、JavaScriptとTypeScriptの関係などについての簡単な説明があります。
ハンドブックの「JavaScriptの解説は専門家に任せる」という執筆の制約からJavaScriptの機能やシンタックスについての解説は基本的に無いため、このページではJavaScriptの学習リソースが提示された上で「TypeScriptを学ぶためにJavaScriptを学ぼう」という旨で締められてJavaScriptの学習を促されます。
🧙 JavaScriptの経験がある学習者
JavaScriptについての知識や経験があるなら「TypeScript for JavaScript Programmers」のページから読むことをオススメします。このページは非常に有用であり、次のようなTypeScriptの中枢を占める重要な機能や概念について高速で知ることが可能です。
- 型推論
- 型定義
- 型の合成(ユニオン型とジェネリクス)
- 構造的型システム
このページを読めばTypeScriptでの重要な概念については把握することができるため、ハンドブックではそれらの知識をさらに拡張していけばよいことになります。
👨🚀 オブジェクト指向プログラミングの経験がある学習者
JavaやC#などのオブジェクト指向プログラミング(OOP)の経験がある学習者は「TypeScript for Java/C# Programmers」のページを読むことでTypeScriptにおいて、クラスやオブジェクト指向の考え方の違いについて学ぶことができます。
公称型(nominal typing)を採用しているJavaやC#に対して、TypeScriptは構造的部分型(structural subtyping)を採用してることから知っておくべき違いや型の考え方についての重要なアイデアが提示されています。
📄️ 構造的部分型
オブジェクト指向。そこまでとはいかなくてもクラスを扱うことができる言語において、ある元となる型(基本型 subtype)という話は欠かすことができません。
🦸♂️ 関数型プログラミングの経験がある学習者
HaskellやMLなどの関数型プログラミング(FP)の経験がある学習者は「TypeScript for Functional Programmers」のページを読むことで、それらの関数型言語との類似機能や違いなどを学びながらTypeScriptについて知ることができます。
内容としてはHaskellの型システムとの相違点と類似点についての解説となっています。具体的には単位型(unit type)や、ポイントフリースタイルプログラミング(point-free programming)、高カインド型(higher-kinded types)などをTypeScriptでのどのように扱うかなどの解説があります。
ハンドブックの読み進め方
ハンドブックは次のようなセクション構成となっています。
ページ | 内容 |
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The TypeScript Handbook | ハンドブックの構成と目的についての説明 |
The Basics | TypeScriptにおける基本的な考え方などについての説明 |
Everyday Types | 日常的に使用するあらゆる型についての説明 |
Narrowing | 型の絞り込みについての説明 |
More on Functions | 関数の型についての詳細説明 |
Object Types | オブジェクトの型についての詳細説明 |
Type Manipulation | 型から新しい型を作成するための方法について解説したページを収めたセクションです。 |
Classes | アクセス修飾子やクラスの型注釈の方法などの説明 |
Modules | モジュール解決などについての説明 |
「Type Manipulation」ではジェネリクスや型演算子などを利用して型から新しい型を作成するための方法について解説したページを収めたセクションです。このセクションは次のようなページ構成になっています。
ページ | 内容 |
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Creating Types from Types | 他の型から型を作成するための方法についてについての説明 |
Generics | 型をパラメータとして取るジェネリクスについての説明 |
Keyof Type Operator | keyof 型演算子を利用して新しい形を作る方法についての説明 |
Typeof Type Operator | typeof 型演算子を利用して新しい型を作る方法についての説明 |
Indexed Access Types | Type['a'] シンタックスを利用した型のサブセットにアクセスする方法についての説明 |
Conditional Types | 型システム内で文として振る舞う条件型についての説明 |
Mapped Types | 既存の型のプロパティをマッピングして型を作成する方法についての説明 |
Template Literal Types | テンプレートリテラル文字列を介してプロパティを変更するMapped typeについての説明 |
「インクリメンタルに教える」という執筆の制約から、ハンドブックでは始めから終わりまで直線的に読めるように、未解説の機能についての言及をなるべく避けながら徐々に知識を積み上げていくような構成となっています。したがって、読み方の基本指針としては頭から順番に読んでいくということになります。
TypeScriptについてまったく知らないという方であれば「Get Started」のイントロダクションページを読み終えてから、冒頭の「The Basics」と「Everyday Types」だけでも読んでおくことでTypeScriptの概要を掴むことができます。
それぞれの知識はページとしてモジュール化されているため、本書を読んで知っている内容などは飛ばして知りたい箇所のページのみを都度読んでいくという読み方も有効です。ハンドブックのセクションだけでなく、特にリファレンスのセクションはそのような読み方が有効です。たとえばリファレンスに収められているユーティリティ型の紹介ページについては、ベースとしている型演算子(type operator)の知識はハンドブックの「Type Manipulation」のセクションで細分化されて解説されています。
むしろ公式ドキュメントよりも本書の方が細かく知識をモジュール化しているため、逆に公式ドキュメントを読みながら日本語での分かりやすい解説を読みたいという時に本書を利用するという読み方も有効です。